useful-info

人事考課の是非について

業種業界を問わず多くの組織では人事考課制度を導入しています。
これは日本で展開している普通の組織体(一般企業から公的機関まで)では、組織を運用するための仕組みとして「トータル人事制度」を導入しているからです。
トータル人事制度とは「人事基本制度(格付けの体系)・給与制度・教育制度・人事考課制度」の4つの制度が連動して機能する仕組みの事です。
これを普通に人事制度と一般的には呼ぶのですが、その仕組みの詳細はまたの機会に記事しますが、今回は人事考課制度について、その仕組みと機能や効果ならびに導入の仕方などを数回のシリーズで述べます。

私は人事教育畑でキャリアを積重ねてきて、現在経営コンサルティング会社で勤務しており、経営全般から専門分野の人事教育関連まで広く相談を受けています。その中で業種業界を問わず組織を支える仕組みの構築と運用のご相談や質問がやはり多いのです。
そしてその中でも、人事考課制度に関する相談は教育制度と並び常に相談のトップにあります。

人事考課制度の悩みの中で、まず最初にあがるのは、現在考課と呼べる仕組みがなく、働く従業員に対して、がんばっている社員にはきちんと報いたい、頑張りが足らない社員にはそれなりに注意喚起の機会をもうけたいと言うものです。

次に人事考課制度は持っているが、現在効果的な運用になっておらず、賞与や昇級昇格を単に決めるだけの仕組みとなっており、経営側からも社員側からも本来人事考課制度に期待する効果から無意味な行事化した仕組みとなってしまっていて、考課時期には通常業務のお荷物的な作業イメージが強いと言うものです。

ですので、現在運用中のほとんどの組織の場合、人事考課結果を単なる賞与額や昇級の処遇反映の為の制度という感覚が多いのではないでしょうか?

また、介護業界の場合は、政府が進めている介護士の処遇改善のための助成金の取得条件としてキャリアパス制度の構築と運用が求められており、キャリアパス制度は先述したトータル人事制度がベースになっていますので、介護事業を運営する上で、人事考課制度の導入・運用は、ほぼ必須の条件になっています。

運用が機能しなかったり、考課時期になったら思い出したように作業を始める行事化した仕組みになっているのは、人事考課制度が何のために存在しているのか?何故我々組織で人事考課制度が必要なのか?人事考課制度を導入することにより我々組織はどのように成長できるのか?など少なくても制度構築時に議論した事が忘れ去られている為だと思うのです。

よく人が人を評価するのは無理だとか、我が社のチームワークのバランスが崩れるとか、評価する事自体がイヤ(馴染まない)だとかいう経営幹部の存在も少なくないのですが、それは自社の社員を格付けするための制度程度の理解しかないからだと考えます。
あるいは、人事考課制度の運用の難しさを知っているからこそ、反対したりするのかもしれません。

実際、人事考課制度は人が人を評価する、つまり評価する側の上司の好き嫌いが過分に介在する主観評価にならざるを得ないので、どうしても完璧な誰が見ても客観性がある公平かつ平等な人事考課制度は、私の長い経験からも優れて成功した人事考課制度など見たことがないです。
(ただ、その組織にだけあったスタイルの人事考課は存在します)
それは多くの組織が制度構築をする時に人事考課制度の本質を理解していない為だと思います。

長年のノウハウから、人事考課制度の究極的な目的は極論ですが、自社の社員がそれぞれの職域・職層で自分に与えられた「仕事(役目)を知っているか?知っていないか?」そしてその「仕事(役目)が出来るか?出来ないか?」を判定する為のメジャー(物差し)、単なるツールだと考えます。

そして、人事考課を実施して物差し(考課表)で社員の仕事に対する力(保有度・発揮度と言います)を明確にした上で、判定結果に対して様々な処遇に反映させるのです。
この段階まではどんな組織でも同じなのですが、処遇に反映させる段階が大きく間違ってしまう企業がとても多いのです。

実は人事考課を実施すると組織内で勝ち組の社員と負け組の社員が明らかになります。
勝ち組とは「仕事を知っていて、仕事ができる社員」であり、負け組は「仕事知らなかったり、仕事が出来ない社員」となります。

組織が成長していくためには、本来は負け組を勝ち組にしていく必要があるのです。つまり負け組を勝ち組にもっていくためには、人材育成(研修や教育)が必要で、人事考課制度は教育制度と密接に繋がった制度なのです。
負け組が勝ち組になれば、それだけ仕事ができる社員が増えていく訳ですから、業績の高い、あるいは何か問題があったとしてもリスクヘッジが容易にでき、常に組織と職員が成長するスパイラル効果が期待できる訳です。

ところが多くの組織は、人事考課制度と教育制度と関連づけずに、人事考課制度と給与制度との関連づけだけに終わらせてしまっています。
つまり勝ち組だから賞与は何%増、負け組だから賞与はこの額、昇格はいずれという形の処遇反映で終わらせてしまうのです。

本来は負け組を救済しなければならないのですが、残念ながら人事考課制度と教育制度が連携していなければ、負け組は折角の成長の機会を奪われ負け組は来年も負け組のままで終わってしまう事になります。

ですから、人事考課制度が上手く運用されている企業は、おしなべて人材育成の仕組みがまず上手く機能している所が殆なのです。
人が育つ組織は間違いなく強く、経営がまさに継営されている、繁栄の状態にあると言えます。
結果、表題の人事考課制度の是非に関して、私はボタンの掛け違いさえしなければ是だと考えています。

次の記事では、制度自体は是でも、実は多くの問題があることを記事にしたいと思います。

記事署名:佐藤康弘

ご相談・お問い合わせをお待ちしております。

092-555-2722

平日9:00〜18:00 (休・祝日を除く)

お問い合わせ

メールは24時間受け付けております。

こちらの記事も読まれています。

  • 【お役立ち情報】福岡福祉向上委員会様 Well-being向上活動のご紹介④【お役立ち情報】福岡福祉向上委員会様 Well-being向上活動のご紹介④ 令和5年度福岡市主催「介護業界全体のウェルビーイング向上推進事業」の研修第4弾   弊社と並行して福岡市の主催のもとウェルビーイング向上推進事業を進めていらっしゃる福岡福祉向上委員会様の 活動のご紹介です!!皆様チェックしてみてくださいね!! 今回のテーマは「心の健康」 研修タイトル:【心の健康。紡いでますか?~向き合うことからの気付き~】 講師:笠 […]
  • 現場リポート(社会福祉法人はぜの実会 様)現場リポート(社会福祉法人はぜの実会 様) 今回は実際のご支援の様子をご紹介いたします。   掲載の許可をくださったのは、久留米にある社会福祉法人はぜの実会様です。 今年の7月4日(水)にマリンメッセ福岡で開催されたCareTEX福岡2018にて、SPEC経営研究所の佐藤が担当したセミナーにもご参加いただきました。 10年20年先の人口動態を見据えて、今のうちから人的経営基盤の整備に着 […]
  • 【ご報告】令和5年介護事務効率化支援事業第一弾セミナーを開催しました!!【ご報告】令和5年介護事務効率化支援事業第一弾セミナーを開催しました!! 令和5年10月19日(木) 先日よりお知らせをさせて頂いておりました令和5年度介護事務効率化支援事業開幕第一弾セミナー「ICT導入が人材と組織能力向上のカギ」を「あいれふ」にて開催致しました!!     […]
  • CareTex福岡2022に経営者向けセミナーに登壇しました。CareTex福岡2022に経営者向けセミナーに登壇しました。 昨年11月2日にマリンメッセ福岡にてCareTex福岡2022が開催され、SPEC経営研究所のチーフコンサルタントの 佐藤が【介護事業の経営改革は職員意識の改革から!「集団」から「組織」へと脱皮させる組織文化と制度づくり】 をテーマに講演を行いました。現在CareTex福岡の公式ホームページにて無料公開されておりますので、興味のある方は 下記のURLより無料会員登録後に […]
  • 「令和6年度介護事務効率化支援事業 シンポジウム「今、注目の経営モデル。集まる経営とは。」開催!!「令和6年度介護事務効率化支援事業 シンポジウム「今、注目の経営モデル。集まる経営とは。」開催!! 【シンポジウム内容】参加者全員参加型 ・介護事業所の経営が面白い ・介護業界の明るい未来と介護事業者の確かな将来性 ・介護人材確保のための特攻薬とは?     など 【ゲスト】 訪問介護センター 笑みリンク 西川清彦 氏  小規模多機能型居宅住宅 ふぁみりー那珂 荻田哲司 氏 介護付き有料老人ホーム マナハウス2番館 大坂健史 氏 開催場所 及び 日時 20 […]
  • 【お役立ち情報】福岡福祉向上委員会様 Well-being向上活動のご紹介①【お役立ち情報】福岡福祉向上委員会様 Well-being向上活動のご紹介① 前回の投稿でこの度「令和5年度事務効率化支援事業」の受託のご報告をさせて頂きましたが、今回の事業と同時期に「福岡福祉向上委員会」様が「令和5年度介護全体のWell-being向上推進事業業務委託」を受託されました。我々の事業と大きな意味で目指すものが同じであるために、密に連携を取り、より効果的な事業運営が見込まれます。 今回は福岡福祉向上委員会様の活動内容のご紹介致します。 […]
PAGE TOP