【解説】CareTEX福岡2018 専門セミナー「介護事業所の経営者・施設長必見!人材定着と組織力強化のための職場改善のポイント」の担当講師による解説③
※この記事は、前回の続きです。前回の内容をご覧になっていない方は、是非そちらもご確認ください。
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「能力を巡る介護業界の問題」
解説②では、人材育成のおける能力(スキル)の種類と考え方について述べました。
今回は介護業界における能力のとらえ方と問題点について記事にします。
業種業界を問わず、組織内で問題が発生したり、あるいは業績が落ち込んだり、思わしくない状況に陥っているときは、多くの場合、組織能力が低下しており様々な問題に対応・対処できなくなっている可能性が高いと考えます。
組織能力の構成要因には、テクニカルスキル・ヒューマンスキル・マネジメントスキルがあるわけですが、経営上の問題の要素として職員のヒューマンスキルの低下等が関係している事が決してすくなくありません。
介護事業所の専門性(テクニカルスキル)が問題でダメな状況になっていくより、組織力(ヒューマンスキル)が問題でダメになっていく場合がほとんどだと思われます。
これは他の業界や一般企業も同じです。
ですから他の業界の人材育成の戦略や夫々の企業の教育体系の中で、社員に習得させるべきスキルとしてヒューマンスキルを重要視しているのです。
つまり、組織人として自分はどうあるべきか、自社の中で自分がなすべき事ややらなければならないことなど組織の中での自分の立ち位置が明確になっており、その力を発揮するためには同僚などチームの力が必要であり、自分も他者の為に必要な一員であることを自覚していくことは、組織で仕事をしていく中で、非常に重要な事なのです。
そういうチームや仲間と仕事を成していく力が強ければ、どんな問題が発生しても乗り越えていくことができ、また未然にリスクをヘッジしていく事もできます。
皆さんの施設で、利用者やそのご家族から人気のある職員が必ずいると思います。
その職員は資格を沢山もっているから人気があるのでしょうか?
皆さんの施設で、同僚から信頼されている職員も必ずいると思います。
その職員は知識を沢山もっているから信頼されているのでしょうか?
おそらく、そういう職員は、その人柄や人間性、介護の仕事をする上での人間としての器のようなものに、利用者もご家族も同僚も惹かれて人気があり、信頼されているのだと思います。
そういう介護事業における人としての在り方などは、実務的なテクニカルスキルで学び取る事は難しく、ヒューマンスキルの教育の範疇なのです。
極論ではありますが、私などテクニカルスキルなどは、後付けでどうにでもなると考えております。
ヒューマンスキルの強い職員は、背中を押してあげるだけで、資格も取っていくでしょうし、専門性も上げていくと思います。
そういうモチベーションを持っている職員だと思います。
ところが介護業界では、人材育成の体系の効果的かつ本質的な整備が進んでおらず、その仕組みにヒューマンスキルの向上のためにメニューや計画は非常に少ないか、多くの場合は計画すらない状態です。
代わりにテクカルスキル系の研修は豊富であり、施設内でも学びの機会は多くあります。
これは本来介護事業の専門能力がなければ事業自体成り立ちませんし、国も必須の習得能力として課している事も関係しています。
しかしながら、経営や組織の現実は「人材格差が事業間格差」である事実があり、その人材育成の中で重要な位置づけのヒューマンスキル系の取組がなされていないのが介護業界の実態だと感じております。
依然、業界内で定期的に職員が利用者に対する不幸な事件や事故が発生しておりますが、私などは、介護や医療や福祉の専門スキルを活かす、使う事ができる人としての器が備わっているのか、専門職としてスキルアップしていくと同時に人として成長しているのかが気になるのです。
人は社会人となって仕事を始めて、組織が教育や研修もせずに勝手に自己成長していく事は稀なことです。
介護業界における人材育成に対する見方や考え方、仕組みや制度など介護事業経営において急務な取り組み課題であると考えるのです。
これは、職員本人のキャリアや職業人生に関わる事でもあり、その事実を職員側にも是非知ってもらいたいのです。
もちろん、ヒューマンスキル系はどちらかというと考え方や思いやモチベーション、ロイヤリティーなど精神面に関わる内容が多く、思いだけでは職員の能力は向上していきませんし、よりよい職業人として成長することは難しいので、それを支える仕組みが必要となります。
教育制度のほか、給与制度、人事基本制度、人事考課制度など、厚生労働省が強化、推奨している介護業界でいうところのキャリアパス制度がこれにあたります。
次回は、介護業界におけるヒューマンスキルの再構築について解説します。
記事署名:SPEC Labo. 佐藤康弘