離職率を効率的に改善するためのポイント③
前回は、
- 離職理由の3位~5位は
「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため(18.6%)」
「他に良い仕事・職場があったため(18.2%)」
「自分の将来の見込みが立たなかったため(17.7%)」 - 3位~5位の本質的な課題は共通しており、ひとまとめに捉え直せば離職理由のダントツ1位であること。
- 共通している本質的な課題とは、「期待する職員像」を明確に職員に説明できていない、あるいは説明はしていても共感を得られていないこと。
以上の内容までお話しました。(詳細については前回記事を参照ください)
今回のテーマは、「離職理由の3位~5位を課題をまとめて解決するにはどうすればいいのか?」です。
それでは早速始めていきましょう。
期待する職員像が明確でないことが問題ならば、検討すべきは具体的手段、つまり「どうやって職員の期待像を明確にするか?」です。
その答えの一つとして、キャリアパスの整備が考えられます。
そもそもキャリアパスとは、事業所目線で、職員に身につけてほしい能力や実践してほしい行動指針を、難易度や重要度に応じて整理・格付けしたものです。言わば、経営理念を職員基準で具体化したものと言えるでしょう。
これは職員目線で見ると、自分が働く施設にどのようなステップが用意されていて、どのくらいのペースで登っていけば、将来どのような働き方ができているのか、それをひと目で確認できる将来の青写真とでも言うべきものです。
そのようなキャリアパスの機能を踏まえたとき、自施設の離職率の実態が冒頭の離職理由3~5位に該当するならば、この点に問題がある可能性は大いに考えられます。
チェックポイントは以下のとおりです。
- キャリアパス表がない。
- キャリアパス表はあるが、内容の検討が足りない。あるいは、テンプレートの丸写しである。
- キャリアパス表はあるが、職員に周知されていない。
- キャリアパス表を周知しているが、職員の理解を得られていない。あるいは、説明が足りない。
- キャリアパス表が、キャリアパス制度として一体感がない(評価制度、賃金制度、教育制度等の諸制度と連動していない)。
該当するものがあるようでしたら、今一度見直すきっかけにしていただければ幸いです。
余談ですが、アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した「動機づけ・衛生理論」という有名な理論があります。
簡単に説明すると、満足感を引き起こす要因と不満を引き起こす要因は違う(満足度を向上しても不満を解消できるわけではなく、不満を解消してもそれが満足につながるわけではない)というもので、人間の欲求を次の2つに分類しています。
「動機づけ要因」
満たされると満足につながるが、満たされなくても不満感の増加にはつながらない要因。
(例)達成感、承認、仕事そのものに対する興味、責任と権限・・・
「衛生要因」
取り除かれないと不満足を招くが、取り除かれたとしても満足につながるわけではない要因。
(例)会社の方針、上司の監督、職場での関係、労働条件、給与・・・
こうやって衛生要因の具体例を眺めてみると、離職率調査の離職理由上位と見事に重なりますね。
この理論に従うならば、組織のポジティブな変化を目的にする場合は「動機づけ要因」に、ネがディブな問題を解消したいならば「衛生要因」にアプローチすべきということになります。
つまり離職率低下を目的にするならば、達成感の提供、仕事ぶりの称賛、仕事の面白さややりがいの共有・・・等の手段は効果的ではなく、施設方針や期待像の説明・共有、効果的なコミュニケーションの勉強などを検討したほうが実効性が高いということです。
そのためにも、本テーマの第1回で述べた「現状分析」を徹底していただき、努力ではなく、効果的な努力により、少しでも多く成果に結びつくならばこれ以上嬉しいことはありません。
この記事が、そのためのお役に少しでも立てたならば幸いです。
もしお困りになられましたら、当研究所までお気軽にご連絡ください。
それでは次回の記事でお会いしましょう。
記事署名:SPEC Labo 山本慎太郎