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人事考課制度の是非について②

「人事考課制度の是非について①」では、人事考課制度の意義や処遇について所見を記しました通り、中でも教育体系(教育制度)との連動の重要性は人事考課制度の運用の成否の核であると考えます。
人材育成の為の教育体系(教育制度)の連動が機能すれば組織能力のテーゼである「人が育つ組織」の実現に近づくことができます。
ただ、①でも述べた通り教育体系(教育制度)との連動の前に、「人が人を評価する」という非常に悩ましいハードルを越える必要があります。
今回は評価の仕方の根本的な問題の理解について考えていきます。

「人が人を評価する」難しさは評価する側(評価者・上司)と評価される側(被評価者・部下)が共にそれぞれが違う価値観(個人毎の常識)や主観(個人毎の好き嫌い)をもって人事考課に臨むところにあります。
いくら公正・公平(どれも100%は無理な条件ですが)な制度運用に留意しても、考課者・被考課者の主観が機械のように誰が見ても、誰が行っても残念ながら客観性の高い納得性のある結果とはなりえません。

例えば、考課表の考課項目について上司が正しい評価(期首~進捗~結果)を行っても、日頃の上司と部下のコミュニケーションが悪かったり、その人(上司)の人間性を理解したり受け入れる事ができなければ、頭では考課表の結果を理解していても、心が結果を受け入れる事ができなかったりします。
つまり、嫌いな上司、馬の合わない上司からはあれこれ言われたくない、その上司自身が評価項目をきちんとこなしているのかなど、本来は自分のための考課なのに違う視点をもってしまうこともあります。
日頃日常的な挨拶をきちんとしない上司に情意考課をつけられるのは心が許さないのです。
確かに今回は考課項目の評価点の通りだと自分も思っているが、あなたに評価されたくないぞ的な感覚です。

もちろんその逆もあります。
部下がいくら素晴らしい成果をあげても、日頃からぶつかる事の多い苦手なあるいは嫌いな部下に対しては知らず知らずのうちに厳しい目線で尺度を見ているかもしれません。
だからこそ考課者訓練は1年に一回は実施すべきと言われるのですが、残念ながら人の主観を機械の様に100%客観に持って行くことは不可能です。
もちろん、考課者訓練はするかしないかを問われると絶対すべき研修メニューであります。

また、別の視点で考課者・被考課者の関係をみると、日頃の上司と部下のコミュニケーションが良好で、上司の部下を育てる姿勢と組織の仕組みが連動しており、部下も自社の組織風土や環境や上司指導を理解し共感していると、評価結果が自分が思っていたより低かったとしても、「あの上司がつけた結果なので、たぶん自分はまだまだなんだろう」と評価結果を受け入れたりします。
もちろん上下関係の良好さは決して仲良しクラブ的な緩い関係ではなく(組織分析を実施すると意外と多いようです)、組織の中で上下左右互いに競い合う関係にある事はいうまでもありません。

では、どうにもどうにもならないのかというと、自分達に合った人事考課制度を作り上げる事は可能なのです。上司と部下のそれぞれの好き嫌いがあるように、その組織・会社にも当然社員に対する好き嫌いがあります。
考課者自身の好き嫌いを会社自体が持っている好き嫌い近づける努力をし、考課者の間で共通の主観を共有するのです。
もちろん会社が好きな社員の定義は、「経営理念」や「信条」・「人材定義」等に記されています。
例え明文化されていなくても経営者や経営幹部等の頭の中、心の中にあります。

と言うことは人材定義が構築されており、それが全社員間で共有されており、その定義(求める理想の人物像)に近づく為に各種制度が機能していることが人事考課制度の適正運用の理想なのです。

極論ではありますが、経営理念を実現する社員とはどのような社員なのか、その社員を育成するためにどのような制度があるのかが重要であり、制度をパーツでみるのではなく組織と社員を理想に近づけるためトータルな仕組みとして見ていくと、おのずと自社に合った人事考課制度の構築や運用が可能となると考えます。

 

 

記事署名:SPEC Labo. 佐藤康弘

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